個人事業主の会社設立(法人成り)とは
法人成りとは、個人事業主が会社を設立して、法人として事業を運営することです。
個人事業主として事業の規模が拡大すると、信用や税金の面で制約を感じることがあります。
会社を設立すれば、さらに事業を伸ばせる可能性があるため、法人成りをする人は多いです。
しかし、何となくで会社設立をすると、思わぬ費用が掛かったり、タイミングを間違えるケースがあります。
今回は、個人事業主が会社設立するメリットや、ベストなタイミングについて解説します。
個人事業主が会社設立するメリット
個人事業主が会社を設立すると、さまざまなメリットがあります。
①税金面で有利になる
個人事業主は所得に対して所得税が課されます。
税率は所得の金額により変わるため、5~45%と幅があります。
法人税は、800万円以下の部分は15%、800万円を超える部分は23.2%の税率です。
会社を設立すると、利益が多いほど税金面で有利になります。
②赤字を繰り越せる
事業で赤字が出た場合に、翌年以降の利益と相殺することを「損益通算」といいます。
個人事業主が赤字を繰り越せるのは3年までですが、法人は10年間にわたりを繰り越せます。
大きな利益が出たとしても、赤字の繰り越しが残っていれば、納める税金を減らせます。
③信用されやすくなる
事業を運営する上で、信用力は欠かせません。
信用力の低い事業は、商品の質が低かったり、支払いが滞ってしまうリスクがあるためです。
そのため、大企業は個人事業主とは取引をしないというルールを作っていることもあります。
法人化すると登記や法に則った組織編成などの制約を受けますが、適切な事業運営ができるようになり社会的信用が増します。
信用力が増えれば、取引できるルートが広がり、さらに事業を伸ばしていけるでしょう。
個人事業主が会社設立するタイミング
個人事業主が会社を設立する際は、適切なタイミングを選ぶ必要があります。
法人成りをするのにベストなタイミングは、以下の通りです。
①所得が900万円に近づいた
先ほど説明したように、個人事業主の所得税は所得が増えるほど税率も増えます。
所得が900万円を超えると、所得税率は33%となり、法人税よりも高くなってしまいます。
そのため、所得が900万円に近づいたら、会社設立する検討を始めましょう。
ただし、単純に税率を比較するだけでなく、会社に残したい金額や社会保険料なども考慮して決めることが大切です。
②売上が1000万円を超えた
売上が1000万円を超えたら、会社設立を検討するタイミングです。
2年前の売上が1000万円を超えると、消費税が課されるためです。
個人事業主で1000万円以上の売上があったとしても、会社を設立すれば売上を1からカウントすることになります。
会社を設立してから2年間は免税事業者となるため、大きな節税に繋がるでしょう。
ただし、インボイス制度への登録をする場合は、設立した年度から消費税の支払い義務が生じます。
税理士と相談しながら、会社設立をするべきか決定してください。
③従業員を雇い事業拡大をしたい
会社を設立して従業員の求人を出すと、優秀な人材が応募してくる可能性が高まります。
個人事業主は常時5人以上の従業員を雇用していない場合は、社会保険への加入は任意です。
しかし、法人の場合は、社会保険への加入が強制なので、従業員からしたら安心して入社できます。
優秀な人材を雇用できれば、あなたの事業をサポートしてくれて、売上を伸ばしていけるでしょう。
個人事業主が会社を設立する際は税理士に相談しよう
個人事業主が会社を設立して、それまでの事業を引き継ぐことを法人成りといいます。
会社を設立すると、赤字を10年間繰り越せて、税金面でも有利になるなど、さまざまなメリットがあります。
会社を設立するベストなタイミングは、所得が900万円に近づいた・売上が1000万円を超えた・従業員を雇いたい、などが目安です。
会社設立の見極めは難しいため、損をしないためにも税理士に相談しながら進めてください。